躍動する”カンテレ8Kクリエイティブ”8Kの現像・編集・グレーディングをMedia Composer®で完結

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躍動する

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関西テレビ放送・制作技術局制作技術センター専任部次長の矢野数馬氏

関西テレビ放送、愛称「カンテレ」。最近、少し聞き慣れてきた「8K」と「HDR」であるが、2017年当時、まだまだ得体のしれない8K/HDRでオリジナル作品『つくるということ』に挑戦したのが、制作技術局制作技術センター専任部次長の矢野数馬氏だ。それから2年、第二弾のショートフィルム『Three Trees』(10分)を仕上げた。そこには前作とはまったく異なる技術アプローチがあった。

AvidとREDフル解像度8Kの制作環境

2018年4月の米ラスベガス開催NABのAvidブースから、このプロジェクトは始まった。Avidのオフライン編集マシンMedia Composerが「8K対応する」という発表を矢野氏が知ったことがきっかけだ。そして2019年1月にデビューした「Media Composer 2019」に、ハイエンド撮影カメラREDのRAWデータ取り込み機能が入ったのである。矢野氏の動きは早かった。 アビッドテクノロジーの担当者に連絡し、制作実績をインターネットで検索、Media ComposerとRed 8Kのチュートリアルビデオを見つけたのである。

そこから矢野氏は前作ではできなかった8Kフル解像度のRED RANGER MONSTRO 8Kを使うことを決めた。これでAvidとREDの2社が提案する最先端の制作環境がそろったのである。

前作の制作経験が「旬な感覚」として残っている

矢野氏はインタビューに次のような言葉をまじえて答えた。
「前作のときの旬な感覚が残っている」というのである。「旬な感覚」……、それは何だろう。

前作『つくるということ』は14分で、メッセージ性の違いをドキュメンタリースタイルとドラマスタイルの2つの演出で表現。また、カラーグレーディング(以下、グレーディング)で色を自在に扱った作風は、テレビ的でもフィルム的でもない映像の叙事詩という世界を創り上げている。そして、作品は世界のクリエーターから高い関心を集めることとなった。
初の8K制作では、8Kカメラを三脚と手持ちで撮影することで、その違いを生かしながら「人」の表現にこだわったという。その一方で「1,000nitという数字が気になっていたんでしょう、波形モニターばかりを見ていたような気がします」と矢野氏。続けて「今でもあの時の旬の感覚が残っています」と話した。日々の編集で忙殺されるが、矢野氏にとって「初めて挑戦した8KとHDRの制作体験が感覚として刻まれている」ことは、波形モニターの数値にはない「クリエーターだけが持つ直感の世界」という一つの確信ではないか。だから、今回の『Three Trees』の制作では波形モニターの数値を気にすることはなかったそうだ。

そして、「8Kらしさを強調するような街の全景やクローズアップを撮ること、HDRゆえに逆光を撮ること、広いダイナミックレンジと色域を使い切ったグレーディングという技術優先の検証時期は終わったと考えています。8KやHDRが必要か否かという議論を聞くこともありますが、私たち制作者に多くの表現手法を与えてくれているのです。この映像の表現は、スタートラインに立ったばかりです。その先にある可能性を引き出したい、もっと作り手の想いを伝えることにつなげたいのです」と語ってくれた。

提供:関西テレビ放送

撮影は報道部門のカメラマン、樋口耕平氏が担当。前作でアジアテレビ賞の最優秀撮影賞を受賞した実力の持ち主だ。技術プロデューサーの横山和明氏、照明の中村貴志氏も前作メンバーというように、カンテレ制作技術チームとしての積み上げも「旬な感覚が残る」と言わせたと思う。

オフラインとオンラインの編集を自在に「行きつ戻りつ」できる

カメラは8K Full Format(8192×4320)のRED RANGER MONSTRO 8Kで、国内初の撮影となった。現場でのフォーカス確認などはカメラからのOUTが3G-SDIであるためHD画質で行った。「樋口氏には感覚として8Kのフォーカシングができる実力がある」と矢野氏はカメラマンに全幅の信頼を寄せる。
撮影したREDのRAWデータを「Media Composer 2019」に取り込み、現像から編集、そしてMedia Composerのグレーディング機能で仕上げたのである。リアルタイムストレージとして「Avid NEXIS│E2 SSD」を利用し、ワークステーションはDell Precision 7920のIntel Xeon 18 Core Dual CPUとAMD WX7100のGPU環境で、ネットワークはDell S4048-ONを使用した40Gのネットワーク環境となっている。

Media Composer 2019による8K/HDR制作システム構成

Media Composer 2019による8K/HDR制作システム構成

このフローは、オフライン編集を象徴するAvidの「Media Composer」が、オンライン編集のグレーディングまで対応する機能を生かしている。
現像もMedia Composerで行っているので、「いつでも現像に立ち戻り、先にグレーディングしてから編集するプロセスも自在。コンフォーム の時間もピクチャーロックもなく、オフラインとオンラインを行きつ戻りつの新たな編集環境です」と、矢野氏は表現者として絶賛した。

では、8K対応となると、Media Composerの操作性は複雑になったのか。
「普段の編集で使い倒している操作とまったく同じでした。8Kなのでビット数の設定などでアドバイスをもらった程度です」(矢野氏)

ラージセンサーRAW撮影、超高精細デジタル現像、編集やカラーグレーディングという制作工程について、「極めて高い技術力に立ち向かう強い忍耐力が必要だった」と振り返る。
「作品に驚異的な意思をもたらし、その解像度や色域は、絵画や写真といった芸術の領域に、ほんの少し近づいたかなと感じています」と続けた。

民放なのになぜ8K制作に挑めたのか

編集室で作品を見せてもらった。4Kの30型マスターモニター(BVM-HX310)と民生用テレビ65型ブラビアに映し出されたHDR映像の仕上がりは見事だった。有機ELと液晶というデバイスの違いを感じないほどの色再現となっていた。また、8Kラージイメージャーのフルパワーは、ラストシーンを構成する海の波と砂、主人公が波の中に立つ足元の砂の一粒が伝わる精細さのあるカットで発揮されており、制作者の想いを感じるものとなっている。
「これまでHD、SDRの映像技術は表現する上でガマンせざるを得ないことが多かった。見たままを表現したい、この色を輝かせたいと思っても、技術の制約が邪魔をしていた。それが8K/HDRで取り除かれ、自由になったと感じた作品制作でした」と矢野氏は話す。それにしても、8Kラージセンサーの被写界深度の浅さに驚く。そこに深い表現を求めたのだろうが、樋口カメラマンの力量がなければ成立しなかったのではないか。技術を生かす人間の力量も欠かせないと思う。

インタビューの最後に聞いた。
「こうした挑戦的な作品を制作できるのはなぜか。民放として8Kに挑むのはどうしてか」。

実に明快な答えだった。
「カンテレ内には、そうした自由さを認める気風があるのかもしれませんね(笑)。 それ以上に、現在も進化する技術に挑まないと、あとあとやろうと思ってもできなくなると考えているからです。そして、自らに課しているのは実績を示すことです。前作はニューヨークフェスティバルのショートフィルム部門で金賞や、アジアテレビ賞で最優秀撮影賞、ルミエール・ジャパン・アワードでUHD部門特別賞などをいただき、局内でも注目されました。こうした信頼が今回の作品づくりを可能にしてくれたと思います。もちろんフォト ロンさんの協賛、アビッドテクノロジーさんの協力も大きいことでした」。

やはり一番は、「カンテレには矢野がいる、樋口がいる」ではないだろうか。

8K/HDRショートフィルム『Three Trees』作品のポスター

8K/HDRショートフィルム『Three Trees』作品のポスター
提供:関西テレビ放送

(月刊ニューメディア2020年1月号より転載)

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