アメリカメディア大手のFOXがグローバル展開するスポーツ番組ブランド「FOX SPORTS」を運営するFOX SPORTSジャパン株式会社(代表取締役CEO:リック・ドヴィ/東京都渋谷区)が、東京都渋谷区神宮前にガラス張りのスマートな外観の新スタジオを開設し、日本版「FOX SPORTS」の放送を2013年3月末から開始した。
神宮前スタジオ開設を任されたFOX SPORTSジャパン株式会社 放送制作技術部部長 斉藤 晋吾氏に、スタジオ開設までのストーリーを聞いた。
新スタジオ開設前は、東京都品川区小山台のマスターセンターで、米FOXからの映画やドラマ、スタジオ収録番組などを、米FOXのスタンダードにならい、ファイルベースで運用していた。
『ファイルベースは、テープ代がかからないといったコスト面以外にも、ベースバンドでの取り込みに実時間をかける必要がないなどの時間的メリットがあります。ですから、新スタジオも当然ファイルベースでの構築を考えていました。
通常、スタジオ開設の際はベンダーがシステムインテグレーションして構築しますが、我々は、なるべくカスタマイズコストをかけずにシンプルに、自分たちのワークフローにマッチするメーカーの機材を選定して組み合わせを考えました。
サブ調整室のガラス、デスクや枕木に至るまで、自分たちの使い勝手を考えてチョイスしたので、手作り感のあるスタジオになっているでしょう。』と斉藤氏は笑顔で話した。
「FOX SPORTS」では、中継映像を放送しながら、Vizrtでスポーツデータベースからの最新情報をリアルタイムにスーパーやティッカーに反映すると同時に、EVSで必要な素材をクリップ化して瞬時にハイライトを作成し、試合中継直後に行われる『BASEBALL CENTER ~プロ野球ポストゲームショー~』にプレイアウトしており、テープ編集・コピー・テロップ入れなど従来のワークフローを必要としない新しいスタイルのスポーツ放送を実現している。
EVSやVizrtなどの機材は、ラック室で集中管理され、それらの制御はKVMやWebアクセスでどこのサブ、ワークルームからでもアクセス可能になっており、省スペース化を図ると共に、柔軟な運用を可能にしている。
EVS「XT3」は、球場からの映像を録画すると同時に必要な場面をLSMリモコンでクリップ作成し、ハイライトを瞬時に送出している。1台の「XT3」に複数の「IP Director」がコントロール端末として接続されており、クリップ作成・ハイライト作成だけでなく、メタ情報編集やコンテンツ管理、インジェスト管理にも活用されている。
「IP Director」でファイル化しながら、ストレージやノンリニア編集機に転送し、番組進行中に追っかけ編集を行いながらアーカイブのトランスコードまでを同時に行っている。
「Viz Engine」は、Dual Channelタイプを採用し、1式で2系統の本線を送出できる。「FOX SPORTS」では、1台の「Viz Trio」から2つのチャンネルを同時制御し、1つをスーパーに、もう1つをセットディスプレイに映像を送出するなど、自由に選択している。
スクロール専用の「Viz Ticker」で常時最新情報を送り出し、スタジオ中央の大型タッチパネルモニターでは、「Viz Engine」がグラフィック描画をし、解説者がコンテンツを自在に制御しながら番組を進めている。
また、EVSに接続してスポーツ解説CGを制作する「Viz Libero」を、日本では初めて採用した。このシステムは、欧州はもとより米FOXでも使われている。
EVS、Vizrtの導入を決定したポイントについて、斉藤氏はこう話す。『スポーツエンターテインメントの番組作りということで、スポーツの生放送でディファクトスタンダードと言えるEVSは、最初から頭にありました。様々なメーカーと比較検討しましたが、安定性やリアルタイム性はもちろん、「Apple Final Cut Pro」との親和性もEVSを選んだ理由のひとつです。今までEVSは中継現場のイメージが強く、ファイル転送できるとは思っていませんでした。
しかし実際には、QuickTimeでラッピングして「Apple Final Cut Pro」へ渡し、編集した完パケ素材をEVSへファイル転送して送出できると知って、中継現場だけでなくスタジオ運用でも十分使えると判断しました。
また、安心して操作を任せられるEVSスローオペレーターが思った以上に存在していることも大きかったですね。
CG部分に関しては、米FOX SPORTSのブランディングに沿ったものにする必要があったため、米FOX SPORTSで採用していたVizrtが念頭にありました。
CG制作は非常に時間とコストがかかるので、米FOX SPORTSのテイスト・デザインを日本向けに改修して利用できることは、大きなメリットでした。フォトロンのデモを見て「Vizオンエアグラフィックス」は、CGの改修が簡単で柔軟な運用ができると実感し決定しました。
実は今まで、Vizrtはイマジカデジックス、EVSはフォトロン、というイメージだったのですが、2012年にその2つが合併してフォトロンという1つの企業になったことで、我々としてはこういった一連のソリューションを相談しやすくなったのもメリットですね。』
こうして2013年3月末から放送を開始した「FOX SPORTS」の今後の展望を斉藤氏に聞いてみた。
『今までの日本のスポーツ情報番組ではなかなか見られなかった、試合のハイライトをトークショー形式で解説する「ポストゲームショー」などのオリジナル番組を通して、新しいスポーツの楽しみ方をスポーツファンの皆様にご提供できたのではないかな、と思います。我々も生中継が増え、「やっと放送局になれた!」という気持ちになっています。
今後は、もっと外へ出て行ってオリジナル番組の制作などにもEVSとVizrtを活用していきたいですね。』
FOX SPORTSジャパン株式会社
「FOX bs238」をはじめとするFOXグループチャンネルで、日本のプロ野球や欧州サッカー、格闘技などを、米FOX SPORTS、欧州SKY SPORTS全面的協力の下、世界最先端のスポーツ番組制作・放送のノウハウを取り入れて放送している。
プロ野球では、パ・リーグ3球団の公式戦主催全試合を完全生中継するほか、その日の見どころや試合勝敗予想などを解説する『BASEBALL CENTER ~プロ野球プレゲームショー』、試合終了後すぐにその日のハイライトをスタジオで解説する『BASEBALL CENTER ~プロ野球ポストゲームショー~』などの番組を放送している。
欧州サッカーでは、イングランドFAカップ、ドイツ・ブンデスリーガ、イングランド・プレミアリーグ、イタリア・セリエAの試合のほか、欧州各リーグのハイライト番組も放送している。
東京都渋谷区神宮前6-25-14 神宮前メディアスクエアビル
西野
高木
EVS×Vizrtのそれぞれの特長であるリアルタイム性を生かした 今までにないファイルベースワークフローのスタジオ構築をお手伝いできたと思っております。
オリジナリティーあふれる番組作りをしており、運用開始直後からFOX様から製品について前向きな質問を何度もいただいています。弊社からも、さらに演出の幅 が広がるような提案をしていきたいと思います。
導入決定から短期間でのスタジオ開設となりましたが、機材の選定・導入の過程では決定と実行のフットワークの軽さに感心させられ、OA初日からの順調な滑り出しにはFOX様運用チームの結束力や適応力の高さを感じました。
演出でも積極的に新しい試みをして行こうというお客様の意志をアシストできるよう、弊社としても十分な提案力、サポート力を備えて行きたいと思います。